国際連携食料健康科学専攻
学びの声:修了生インタビュー part 2

(本稿は2021年6月19日に開催されたWEB専攻説明会でのインタビュー内容を基にして作成された記事です)


司 会

新開泰弘(GIP-TRIAD広報委員長)

回答者

赤見信幸(2019年度修了生)

回答者

水野真実子(2019年度修了生)


新 開
本日は修了生のお二人をゲストとしてお招きし、詳しい話をお聞きしていきたいと思っております。
まずは簡単な自己紹介をお願いできますでしょうか?

赤 見
おはようございます。GIPの1期生を2019年に修了した赤見といいます。よろしくお願いします。GIPを修了しまして、新卒でマーケティング系の調査会社に入社しました。そこで今やっているのは、後でも話しますが、海外調査系の企画を運営したりしています。近況は、調査でも海外に行けない状況なので、ここずっと日本で生活しております。よろしくお願いします。

水 野
同じく1期生の水野と申します。2019年に修了した後、今は化学系の商社で営業として働いています。近況としては、コロナ渦で出張ができないので、Web ミーティングを通して海外のサプライヤーとミーティングしたり、プレゼンをしたりしているので、大学院で学んだことを活かして仕事しているなと感じています。今日はよろしくお願いします。

新 開
ありがとうございました。はじめに、このプログラムに参加した動機やモチベーションをお聞かせください。また、入学するまで半年間の空きがあると思いますが、どのように過ごされていたかをお聞かせいただけたらと思います。

赤 見
まず1つめのGIPに入った動機については、海外に行ってみたかったということが一番大きかったです。 大学院に行こうと思っていたのですが、元々、筑波大学の生物資源学類というところに学士でいて、そこの社会経済学コースで農業経済みたいなものをやっていたのですが、どちらかと言うとGIPにはビジネス的な方面で興味を持って入りました。一方で、経済コースなのでそんなに実験とかをやっていたわけじゃないのですが、その中でも経営的な専門性が高められるかなということと、海外に行きたいということ、その二つで決めました。
大学院に入るまでというか、GIPの入試が始まる半年間は元々いた生物資源のところで大学院生として活動していました。 転専攻という形です。

水 野
GIPを選んだきっかけというのは、元々私は医療科学類の国際医療科学主専攻というところにいて、微生物の研究室にいました。そこには、森川先生や大庭先生が元々いらっしゃったんですが、4年生の時に3ヶ月間、台湾で卒業研究をする機会を頂いて、そこで大庭先生と一緒に台湾大学で研究をさせていただきました。そのときに、大庭先生に進路について相談しました。海外の大学に行ってみたい、海外で生活してみたいということと、グローバルヘルス や国際協力に一番興味があったのですが、GIPのプログラムに台湾大学のChan先生という公衆衛生に関するプロフェッショナルな先生がいらっしゃったので、GIPに進学することに決めました。
それまでの半年間ですが、私も筑波大学の大学院に入っていて、フロンティア医科学専攻の社会医学コースにいて、市川先生の研究室に先に入ってそこで少し勉強をしていました。同じく転専攻という形で、9月からGIPに入りました。

新 開
ありがとうございます。1期生の皆さんはまだGIPができて間もないということもあって、転専攻という形で入学されたような感じだったと思います。 次に、このプログラムに参加して良かったこと、楽しかったことについてお話しいただければと思います。それでは、赤見さんからお願いします。

赤 見
良かったところは2つあるんですが、1つめは、日本とフランスと台湾の3か国で過ごすということなので、みなさんも想像がつくかもしれないですが、文化などの様々な面で視野が広がったことが一番大きいかなと思います。もう1つは、英語を鍛える場だったということです。英語について心配な方いるかもしれませんが、私は本当に最初話せないまま入ってしまったので、そこで鍛えられたというのはかなり大きいかなと考えていて、今の自分の仕事のことなども考えると、この2つが一番大きかったかなと思っています

水 野
私も、海外で生活するということについて体験できたことです。すごく大変なことが多いんですが、それだけ大変だということを知れたことと、外国で日本人とは違う文化で育った人との交流を通して、違う考え方の人とどう接していくかということを学べたことが一番大きいかなと思います。これは今の仕事にも通じていて、商社なので、いろんな国の人とやり取りをする必要があるのですが、日本人と同じようにはいかない、日本人だったらすぐやってくれることでも、外国の人はなぜそんなことをしなければいけないのかなどの合理的な理由が必要だったり、おおざっぱすぎて頼んだ事と違うことをするという人もいたりします。3か国を回っている間に、異文化や外国人の考え方について知ることができたので、自分なりに対応を考えられるようになったことが結構大きいと思います。
楽しかったことは、同級生が文化のことをより詳しく教えてくれるので海外の文化に詳しくなれたり、海外の新しい友達ができたり、いろんな国に一緒に旅行できたりしたことが楽しかったです。

新 開
ありがとうございます。続きまして、このプログラムに参加して苦労したこと、大変だったこともあると思いますが、どうでしょうか?

赤 見
これも2つあるんですが、1つめは、先ほども言ったのですが、コミュニケーションですね。特に英語力。これは私の場合なので、あてはまらない人もいるかと思うんですが、それまでの人生で英語を話して活動するっていうことをしてこなかったので、いきなり放り込まれたみたいな形、まぁ、自分で行ったんですけれども、そういうことになっていたので最初は苦労しました。ただ一方で良かったなと思うのは、向こうもネイティブではないので、お互いがそれほどペラペラというほど、ネイティブ並みにちゃんと話せるかと言うと、そうではない場合もあり、台湾に行ってその場の台湾人と話すのもそうですし、フランスに行ってその場のフランス人と話すのもそうですが、ネイティブではない英語の中でどうやってコミュニケーションをとるかというのは、今になってみると大事だったかなと思います。世の中ネイティブではない人の方が多いのでという意味です。
もう1つは、これは私の時だったので今は当てはまるかわかりませんが、GIPができて最初の時期だったので、あまり整ってない部分がいろんな部分であって、先生方も含めて、全体的に苦労というか大変だった面はあったかなと思っています。

水 野
1つは、授業内容というか、私が行っていた医療科学類の授業は、当時基本的には講義を受ける、各自実験を行う、レポートを書くというのがメインだったのですが、GIPの授業は、基本的に、あるテーマについてディスカッションをする、それをまとめてプレゼンする、あるいは論文について調べて発表するというような、ディスカッションと発表の授業が多かったので、今までそういうものに慣れていないうえに英語なので、同級生の台湾人やフランス人が結構ディスカッションが強くて、その中でいかに自分の意見をまとめて英語で話すかというところで苦労しました。また、私は発表が苦手だったので緊張するし、話すのも苦手だったので、そこは結構苦労しました。あとは、フランスの役所の手続きが一番苦労したかなと思います。

新 開
ありがとうございます。それでは、次に台湾で過ごした学生生活について、何か印象に残っていることなどあればお聞かせください。

赤 見
私に当てはまる部分でいうと、インターンシップをしたということが1つ大きかったかなと思います。私の場合は、セメスターが終わった7月くらいに1か月間、台湾大学の先生から紹介していただいた、医療系のスタートアップのベンチャーでインターンシップをしていました。日本のマーケットの競合について調べる仕事だったんですが、一人で行って一人でその場の人とコミュニケーションをとってという感じだったので、とてもいい思い出になりました。GIPは結構守られていて、みんな丁寧にやってくださるので、本当に困ったときには頼る人がいるのですが、インターンシップに行くとそうではないなという意味で、今となってはいい思い出になっています。

水 野
私は台湾でインターンシップはしていなくて、研究はしていたんですが、それよりも台湾で遊んでいたことの方が印象に残っています。現地で台湾人の友達ができたんですが、その子の紹介で本当に現地の人しかいかないようなローカルなところに連れて行ってもらって、日本語も英語も通じないような台湾の人と交流したのが印象に残っています。

新 開
フランスで過ごした学生生活で印象に残っていることを、学内・学外問いませんので、教えてください。

赤 見
フランスは、食事とワインと旅行です。学内のことを何も言っていなくて恐縮なのですが。フランスは陸続きで、飛行機代が安いこともあって、色々なところに旅行に行けたということと、セメスターが始まる前に1か月ほど、つてがあってパリにいたので、そこでいろいろな美術館に学割を使って無料で行けたことです。

水 野
私は学内のことで。当時私は公衆衛生の関係で子供の肥満について色々調べていました。その関係で、フランスの肥満児に対する対応についてフランス人の先生と一緒に調べていたんですが、ある肥満解消プログラムを作っている団体にインタビューさせていただきました。そこでは、家族(親)、医師、教師などがグループになって、その子供に対応するということを色々な自治体が無料でやっていて、かつ、そんなプログラムは子供にとって恥ずかしいのではないかと思ったんですけれども、フランスの子供たちは、肥満はよくないことだと自分たちでも理解していて、積極的にそれを利用していると聞いて、考え方がちがうなあというか、それがとても印象に残っています。

新 開
ありがとうございます。それでは、現在のお仕事の内容とGIPでの経験が活かせているなと思うことがありましたら、教えてください。

赤 見
今の仕事の内容は、調査会社に入っていて、海外案件をメインで担当しています。
調査会社というとあまりイメージつかない方も多いかと思いますが、マーケティング系の企業の経営課題に対して、どのように次のアクションに繋げたらいいかということを判明させるための調査など、ブランド調査とか聞いたことあるかと思いますが、そのようなことをやっています。
GIPの内容というか、海外留学をしたことと広くとらえると、何が役に立ったかというと3つありまして、1つ目は、海外留学していたというと、海外業務に充ててもらえる可能性が高まったということです。調査会社は、いろいろな業種の方から仕事をいただくので、結構役に立ったかなと思っています。2つ目はプレゼンする機会が多かったので、プレゼンへの慣れがあったかなと思います。今の仕事でも報告会とかで、調査結果をクライアントに報告したりするので、それが役立っていると思っています。3つ目は、外国籍の方とコミュニケーションをすることにためらわなくなったことです。調査するときは、十数か国一斉に調査することがあるんですけれども、その人たちとそれぞれやり取りするときにうまくいかなくても、こんなものかなという感じでメンタルが鍛えられた、というか、日本の常識があてはまらないということを知れたことは大きいかなと思います。

水 野
外国に住んで外国人と英語でコミュニケーションをとりながら生活したという経験は、今の仕事でも活きています。今の仕事は商社なので、海外メーカーから化学品を輸入して日本の会社に売ったり、逆に日本企業の製品を海外に輸出したり、仲介をすることが多いのですが、結構トラブルが起きるので、メールで連絡したり、プレゼンしなくてはいけないというような機会が多いです。GIPを通して、論理的にはっきり説明しないと伝わらないということを学べたので、ミーティングで話すときに、話し方に気を付けることができるようになったり、プレゼンにも慣れたので、パワーポイントでさっさと資料を用意してちゃんとプレゼンできたり、また、外国人を前にすると今でも少し委縮してしまうこともあるんですが、そこまで怖がらずに、たくさん話せば同じ人間だから通じるということも、GIPを通して学べたことが、海外の方とのコミュニケーションに役に立っています。

新 開
ありがとうございます。それでは、参加者の学生さんから事前に受け付けた質問がありますので、それについてお聞きしたいと思っています。まず1つめは、入学試験の時にプレゼンのテーマ決めや英語対策などはどのように行っていたのでしょうか?という質問が届いていますが、そのあたりのことについてはいかがでしょうか?

赤 見
これも私の時の話になって恐縮なんですが、プレゼンといっても2つあると思っていて、1つが自分のテーマについて語ること、GIPでやりたいこと、モチベーションだったかな、そんなことを聞かれたというのが1つと、あとは受験生の間でディスカッションをするというのがあったんですけれども、やりたいことというのはそのまま GIPに入りたい動機とイコールだと思うので、先ほど皆さんが自己紹介で語ってくれたやりたいことをそのままぶつけてもらえれば先生は評価してくれると思っています。伝え方とか、英語の話でいうと、私の場合は元々専攻でいた生物資源学類の大学院の先生がいらっしゃったので、その方にプレゼンをして、英語や内容がどうだったかとかそういった部分は見てもらっていました。もう1つのディスカッションについてなんですが、そうですね、これはぶっつけ本番で何が当たるか分からないのですが、その場である程度ディスカッションの球ができるように自分の中でネタを用意しておくとか、健康とか食とかそういうことに関するネタを用意しておくということはやっていたかなと思います。私の場合は特に、水野さんを含め医療科学出身の方が二人だったので、生物資源からの視点をできるだけ取り入れてやっていましたが、実際それをやると向こうには全然話が伝わらないので、あまり共通認識の知識ではなかったので、あまりディスカッションにならなかった記憶があります。

水 野
プレゼンのテーマ決めは、やはり志望動機がメインテーマなので、私は公衆衛生について勉強して役立てたいというのをテーマとして決めて、それから、GIPだと日本、台湾、フランスと3か国に行くので、その3か国でどういうテーマで勉強して自分の知識にしたいかということを軸にプレゼンをつくりました。
皆さんはもうすでにGIPに興味を持ったきっかけっていうのはあると思うので、それをもとにフランス、台湾、日本でどんなことが勉強できるか、それをどう自分の研究テーマに役立てるかというのを考えながらプレゼンを作るといいと思います。英語対策については、私は研究室の先生や外国人の先輩にお願いしてプレゼンの練習をしたり、会話の練習というか、英語でコミュニケーションをとる訓練みたいなのものをやっていました。皆さん研究室とかにいると思うので、研究室の先生や先輩にお願いしてプレゼンをみてもらったり、もし外国人留学生がいるのであれば、英語の練習も兼ねて付き合ってもらうといいんじゃないかと思います。

新 開
ありがとうございます。続いて、海外での生活について、お金はどうされていましたか?また両大学とも学生寮に入寮とありますが、食生活などは普段はどのようにされていましたでしょうかという質問です。

赤 見
金銭面で言うと台湾、フランスともに奨学金をもらって行っていました。台湾に行くときは確か日本の奨学金をもらって行ったような気がします。それが月に8万円だったと思います。フランスにはトビタテ留学 JAPAN という奨学金制度がありまして、その選考に通過して月に16万円だったかな、あと準備金が30万位で、全部で100万円ほどもらえたのでそれで生活していました。どちらも返済なしのやつですね。学生寮にはどっちも入っていたというのはその通りで、台湾での食事は外食がメインでした。むしろ自炊はしてはだめという寮だったので、台北はご飯屋さんたくさんあるのでそれで安く楽しくごはんをしていましたね。フランスでは自炊がメインでしたね、外食は高いので近所のスーパーに行ってそこで食材を買って料理するっていうようなことをやっていたと思います。ただ私の部屋は冷蔵庫が壊れていて、ずっとベーコンばかり食べていたような気がします。「冷蔵庫壊れてるよ」って寮の人に言っても、「残念だね」とだけ言われて(笑)、そういうものだと思っていればいいと思います。

水 野
ほとんど赤見君が答えてくれたとおりですが、私も奨学金で生活していました。台湾に行くときは、日本の奨学金の機構からプログラムに対して支払われる奨学金というのがあって、そこから月8万円をもらって生活していました。台湾は基本的に物価が安いので8万円で十分すぎるほどです。食生活ですが、台湾は基本的に外食文化で、キッチンのない家も実は多いです。その分、外食がすごく安くて、一食100円、200円でおなかいっぱい食べられるようなところなので、特に食費がかさんで大変ということもなく、楽しくおいしく安く過ごすことができます。
フランスの方も、日本の政府と民間企業が連携している奨学金があって、留学先で何を勉強したいかというのをプレゼンして面接官に説明したり、学生同士でディスカッションをしたりする選考があるのですが、その選考に通過すると準備金と行先の国によって金額は異なりますが、フランスの場合は月16万円をもらうことができます。なので、それで生活していました。フランスは基本、物価も高いし、外食も外食税があるので高いんですね、どこも2000円くらいする。なので、フランスでは自炊していました。醤油とかは意外と買えるので、鍋で米を炊いたりして日本食を作ったりして食べていました。
余談ですが、帰る直前の時期に寮の天井から水漏れが起きたことがあって、それを寮の人に言ったら私が出かけてる間に直してくれたんですけど、その時になぜか自炊に使ってる鍋を使われたので、最後の数日間は全く自炊ができずフランスパンばかり食べてました。

新 開
ありがとうございます。修了生の皆さんは頑張られて、奨学金をうまく取ってこられていますね。今までのところ、修了生の皆さんの奨学金獲得率は結構高いと聞いております。続いては、台湾やフランスでの学修において、日本との違いを感じた部分などがあれば教えて下さいという質問です。

赤 見
そうですね、学士と修士も違いますし、日本の大学院に行ったことがないので、分からない部分もありますが、印象としては 、ディスカッションやプレゼンテーションの機会がとても多いですね。意見を求められる機会がすごく多いので、そこが一番の違いかなと思います。GIPの部分でいうと、フィールドワークの機会が結構多かったです。台湾では漢方系の企業の工場に見学にいったりしました。

水 野
台湾、フランスともにディスカッションなど、自分の意見を言わなくてはいけない場面が多かったです。また、論文についてプレゼンをするという授業がとても多かったのですが、スピードが速くて、論文を渡されたその日のうちに読み、その日の授業で発表するということが多かったので、 ハードだったのを覚えています。
実験の授業もありますが、結構簡単だったな というのが印象に残っています。筑波大学の医療科学類の授業では、2~4年生は、各グループに分かれて1つの実験を行うということをたくさんやっていたのでたのですが、フランスの大学では、クラス全員でひとつひとつの工程を先生と一緒に行うという感じの授業だったので、実験に関しては簡単だったなという印象をもっています。

新 開
では、次の質問です。ホーム大学にいる間は、アルバイトや研究などやることがたくさんあるという印象なのですが、ホーム大学以外で学んでいる時、授業外の時間は何をしているのでしょうか?という質問です。

赤 見
ホーム大学にいる間は、私はアルバイトをしていました。第1セメスターは、まだ研究が云々みたいな話はそんなに出ていなくて、先生も含めGIPに慣れようみたいな感覚が強かったかなと思います。他大学では、海外にいた時は、課題をやってました。フランスは結構授業がしっかりと入っていて、夕方位まで授業があったのですが、その後は課題をしたりプレゼンの資料を作ったりしていました。多いときはプレゼンが週に2つ、3つあったので、それをやらないと間に合わないという感じで、平日はずっと何かをしていた記憶があります。

水 野
私は、基本課題をやっていました。レポートやプレゼン準備が結構多いので、基本的には授業が終わった後に夜にそれをやるという感じです。もちろん自由な時間もあるので、週末などは、日本にいるときはアルバイトしていることが多かったんですが、海外ではアルバイトはできないので、せっかくなので、同級生や現地の友達と一緒にあるいは一人でも、色々な所に出かけていました。住んでいる所の周辺だったり、少し遠くの場所など、なかなか今後日本に帰ったら来ないだろうなと思うマイナーな場所を探しては出かけていました。結構楽しかったです。

新 開
他の国へ移動する時は、皆一緒に移動したのでしょうか?

水 野
いえ、バラバラでした。各自チケットをとって。
日本から台湾に行くときは、台湾人は結構ササっと帰っていって、フランス人はそれぞれでした。一旦フランスに帰った人もいましたし、日本で行き残したところに行った後に移動した人もいましたし、日本人と一緒に移動した人もいました。
台湾からフランスに行くときは、結構間が空いていたので、一旦日本に帰って、各自自分のタイミングでフランスに渡っていました。

新 開
次は、特定課題研究に関する質問です。特定課題研究のテーマの決定はいつ頃されましたか?研究室での活動はどのような雰囲気でしたでしょうか?という質問です。

赤 見
テーマをいつ決めたかについてですが、私の場合は、それぞれの国で毎週ゼミみたいなものをやっていて、その場の先生方と何をやりたいかについてはずっと話はしていたのですが、最終的にはフランスに行った時に決まったと思います。フランスの第3セメスターの11月頃に中間発表が行われるので、それまでには本決まりしていないといけません。もちろんラボを使った実験をやる人は、時間が必要なのでもっと前から決めるのですが、私はそういうことではなかったので割と遅めに決まったかなという印象があります。ゼミの雰囲気は、基本的には一人です。他の人は全く違う研究をしていたりするので、ゼミが云々というよりは、先生と一対一でコミュニケーションとって、どう進めていくかというような空気が強かったかなと思います。

水 野
私も、ちゃんとこのテーマで書くと決まったのは結構遅くて、フランスにいるときだったと思います。ただ、GIPに入った時からやりたいテーマは決まっていました。公衆衛生でかつ小児肥満に着目したいというのは決まっていたので、日本、台湾、フランス各地でそのテーマに関して色々調べていく中で、いくつかの候補から、これにしようと決めたのがフランスにいた時でした。実験系ではないこと、かつ自分で決めなくてはいけないので難しいとは思いますが、皆さんもなんとなくやりたいことのイメージはあると思いますので、それについて色々勉強するところから始めて いけばテーマ決めはすぐ決まるのではないかと思います。

新 開
事前に受け付けた最後の質問です。就職について教えてください。 どのような仕事が適正になるのか、選択肢が広がるのか又は狭まった分野なのか、日本での就活経験についてお聞きしたい。また、一般的な日本の大学とはスケジュールが半年ずれていますが、それで何か不便なことなどはありましたか?という質問です。

赤 見
スケジュールについての不便はあるかという質問に対しては、不便はあると思いますね。一番大きいのは、入社が半年遅れるということは、実質1年遅れるということになりますので、周りの同期の方と比べると1年遅く入社することになります。水野さんはちょっと違いますが。あとは、就活をするタイミングですが、一括採用の就活期間は4月~6月が本番になるかと思いますが、その時期、GIPでは第4セメスターなので、インターンシップをしながら研究をしたり論文を書いたり、その上で就活をするということになります。私は日本でインターンシップを3か月位やっていたので、ハードだったなと今になって思います。
選択範囲が広がるかというのは何と比較するかによって違うと思います。つまり、学士の何もないまま卒業するのと比較するのか、もしくは日本で研究をずっとしていた修士学生と比較するのかで見方が変わってくると思います。今思うと、GIPで1番向いているのは、コンサルなどになるのかなと思います。特に海外系の案件ですね。GIPに行って海外に対する視野が広がるということはもちろん強みになりますが、特別 GIPにいたからできる業界があるかというと、そうではないと思います。曖昧な答えで申し訳ありません。

水 野
就職で受けられる業界が広がるか狭まるかというと、学部卒で受けるのと比べると経験が増えているので、色々な企業にチャレンジできると思います。しかし、研究開発系に行きたいのであれば、日本でずっと研究してきた学生と比べると、少し厳しいかなと思う部分はあります。やはり2年間研究に没頭してきた人たちの方が強いと思います。
就活で苦労したかという点ですが、就活の時期に最後の論文があるので、確かにハードなスケジュールにはなりますが、こなせないわけではないので大丈夫でした。企業によっては10月入社も受け付けてくれます。私の場合は10月に入社できたので、卒業後すぐに入社することができました。卒業後の半年間は別に働かずに好きなことやってもいいと思いますし、働きたい人は企業と話しあって10月に入社をすることもできますので、その辺はそんなに心配することはないと思います。

新 開
ちなみに、赤見さんは4月入社だったんですか?修了した後、半年間はどんなことをされていましたか?

赤 見
4月入社でした。昨年の4月です。私の場合はちょっと特殊なパターンなので恐縮ですが、半年あったので、完全にプライベートで神社仏閣に3ヶ月修行にいき、その後3ヶ月間、台湾で語学留学をしていました。

新 開
そうなんですね、ありがとうございます。詳しい話を修了生から聞いて、参加者の皆さんからも、さらに聞いてみたいことが出てきたのではないかと思います。せっかくの機会ですので、皆さんから質問を受けつけたいと思います。

参加学生
水野さんに質問したいのですが、フランスに行った際に、子供の肥満解消プログラムの団体にインタビューされたとのことですが、トビタテ留学JAPANの審査では、自分がする活動を詳しく説明しなくてはいけないと思うのですが、事前に調べてから団体にコンタクトをとったのか、どのようにそのプログラムの内容を知ったのかが気になりました。

水 野
これは完全にフランス人の教授からの紹介です。教授にこういうことをやりたいと言ったら、こういうのを知っているよと教えてくださり、教授が全部お膳立てをしてくださいました。トビタテの留学プログラムでは、そこまで具体的なことは言わずに、こういうことを勉強します、というような結構ざっくりとしたプレゼンをしました。

参加学生
では、具体的な活動内容は言わずに、学外でどのような活動をするかは言わずに審査をうけた感じですか?

水 野
そこまで抽象的ではなく、ある程度こういうことをするとは言いますが、別にアポを取っているとか、絶対やるとかではなく、願望というか、やりたいことを言います。
トビタテに関しては、そういう人が多いので、そのへんのところは問題ないです。
事前にアポをとって完全にこれをやりますというのが決まってからでないといけないということではないです。

参加学生
GIPというのは、他の専攻とは少し違うということもあって、就職の面接などではどのようにそれを伝えたのかというのをお聞きしたいです。

赤 見
就活のときに伝えていたことというのは、これは結構難しくて、実は自分でもうまく説明できた記憶がないんですが、GIPって実際何をやっているかよくわからないという風に面接官からは映りがちです。実際、海外に行っていましたという人は腐るほどいて、面接官は1日何十人もそのような人たちと面談していますので、表面だけのことを話しても印象に残らないんですね。聞かれたら話せばいいと思うんですが、GIPの中で、何か本当に熱意をもっていた側面を強調して話す方が結果的にはいいのかなと思います。
個人的にGIPのことを一番よく話せたなと思う面接は、専攻自身に興味を持ってくださった面接官がいらっしゃって、その方が「ちょっと気になるので1分間でプレゼンしてくれませんか?」と言ってくださったんです。普通は色々含めて1分なんですが、GIPだけで1分くださったので、自分が思うGIPのいいところを生き生きと語れたときが一番良かったかなと思いました。伝えるのは難しいですが、どこかしら1つを強調してやったほうが結果的には伝わるのかなと思います。あまり色々情報を入れると伝わらないなというのが印象としてありました。

水 野
確かに特殊なプログラムなので説明するのは難しいんですが、結局就職で聞かれるのは、私たちが何を考えて、何をしてきたか、それがどうその企業で役立つか、という3つのことを面接官は気にしていると思うので、プログラムの説明については、「日本、台湾、フランスに1学期ずつ留学して勉強しました」とざっくり話して、あとは自分が何を勉強してきたかというところを面接で伝えればいいと思います。

参加学生
お二人に質問なんですが、修士論文の代わりになる特定課題研究論文と入学時にプレゼンする内容は必ずしも一致しなくても大丈夫なのでしょうか?入学試験の際に、特別課題研究を踏まえたうえでプレゼンしなくてはいけないのかなと思っていたので、どの程度のクオリティで入学試験のプレゼンをしなくてはいけないのかを教えていただければ嬉しいです。

赤 見
先生がどのようにお考えになるかは分からないですが、個人的には全く違っていても問題ないと思っています。実際私も関係ないですし、方針が違うこともよくあることですし、それを話し合うためのゼミであったりもするので。テーマが違ってもいいかという質問に対する答えとしては、全然問題ないと思っています。ただ、クオリティ云々については、ちょっと微妙な感じがしていて、少なくとも入学したいと思っているそのときに、実現したいと思っていることを、こういう風に具体化できるからGIPに入りたいということを入試で伝えていかないと先生方の熱意にも届かないですし、そういう意味ではクオリティが低くていいかというとそれは違うかなと思います。ただ、最終目的地点とどれだけマッチしているかは気にしなくてもいいと個人的には思います。

水 野
私も、最初にプレゼンしたときにやりたいテーマと最終的なレポートは必ずしも一致している必要はないと思っています。実際、みんな多少は変わっていると思います。入学するときは、その時点でやりたいことをプレゼンに落とせばいいと思います。完全に結論を出す道筋が決まっていなくても、自分がこういうことをやりたい、なぜやりたいのか、どういう方法でそれを調べていくか、というのをプレゼンにまとめていけばいいと思います。

参加学生
2点質問があります。1つめは、フランスは外食が高くて自炊、逆に台湾は外食文化だとおっしゃっていましたが、それ以外で何か、健康意識、食文化、環境に対する配慮への意識などで感じた3か国における違いはありますか?2つめは特別研究課題についての質問ですが、3か国を周れるということで、具体的に日本とフランスと台湾で、どういうことをして、どういうことを特別研究課題に取り組んだのかということをお聞きしたいです。

赤 見
海外で感じた栄養面、衛生面、環境での違いは、個人的には台湾が一番大きかったです。台湾に行ったことがある方は知っているかもしれないですが、夜市とかナイトマーケットというのがすごく盛んなんです。外食が盛んで、夜市も盛んで、物価も安いとなると、お店によっては何を使っているかわからない、3時間平気そうな寿司とか、めちゃめちゃ怪しいそうなものが当たり前にあって、台湾の方も結構それを気にしているんですね。箸は洗浄して使いまわしているからマイ箸を持つとか、そういったことに敏感になっている人も私の周りにはいました。
3カ国での滞在が特定課題研究にどう絡んだかというと、海外の輸入品に対して健康や体に良いという情報を付け加えると、どれぐらい売り上げやビジネス的にインパクトがあるかということを調べたことがあったのですが、日本は食料を世界に依存している部分が大きく輸入に頼っている部分もあるので、3カ国に行ったという経験自体が課題に若干含まれているかなと思います。曖昧な回答ですみませんが、そのような答えにさせてください。

水 野
台湾は結構大雑把というか、食の安全に関しても、私の周りは大雑把な人が多くて、そんなこまかいことはあまり気にしていないという人が多かったような印象がありました。環境について語っている人も特にいなかったです。ただ、ベジタリアンは多かったです。フランスは人によると思います。本当に大雑把な人もいれば、すごく気にしていてビーガンの人やオーガニックにこだわっている人も多かったです。 環境に関しても、国の政策としてトラックの通行を規制して排気ガスを減らそうといった取り組みを行っているんですが、路上はゴミだらけだったり、人によって差が大きいのではと感じました。
各国で何をしていたかというと、日本にいた時は最初の1学期だったので、自分の研究テーマについて深堀りして色々調べていました。どんなテーマで書けるかなというのを本や論文などを読んで調べていました。台湾に行った時は、公衆衛生の専門の先生がいらっしゃったので、公衆衛生学でどういった手順で研究を進めていくのかというのを週1のゼミでいろいろ話をしたり習ったり、実際に自分でこの論文を読んでみようとか、ちょっとこれについて調べてみようとか、研究方法について勉強をしました。フランスに行った時は、肥満解消プログラムやっている団体にインタビューに行って実際に活動しました。

新 開
ありがとうございます。それでは最後に、GIPの受験を検討している学生の皆さんへのメッセージということで、お二人からコメントをいただけたらと思います。

赤 見
良いことも悪いことも、うまくいかないこともありますが、逆に言うと、こういうことをやっているというのはすごくユニークで、他の場所では得られない経験だったり考え方だったりというのを学べる場所だと思うので、本当に自分が行きたいと思うようなモチベーションがあるのであれば、チャレンジするのはすごくいい選択かなと思っています。

水 野
GIPのプログラム内容は、通常の大学院のプログラムとはかなり異なるので、周りの友達と違う進路になり、色々不安もあるとは思いますが、もし興味があるならぜひ挑戦してみるといいと思います。辛いことも大変なこともありましたが、それ以上に楽しい経験ができました。それは、卒業後働いた時にすごい自分の糧になるので、是非挑戦してみてください。

新 開
インタビューが少し長くなってしまいましたが、これにて説明会の方を終了させて頂きたいと思います。修了生のお二人には本当にいい話をたくさんしていただいて感謝しています。やはり教員だけでは分からないような話がたくさんあって、修了生の方の体験談を聞かせて頂くのは本当に貴重でありがたかったです。皆さん、本日はお忙しい中ご参加いただきありがとうございました。受験を検討されている方は是非チャレンジしていただけたらと思います。

文字起こし:GIP専攻事務室
編集:新開泰弘、赤見信幸、水野真実子